2013年1月4日

ルネ・モラー/アルテュール・オネゲル 「ダビデ王」(ドイツ語からの私訳)―第三部(完) Arthur Honegger "König David (Le Roi David)" Dritter Teil

第三部


ダビデ、王にして預言者

17.讃歌(同度の合唱)

聞け、私の心は歌声に響き始める.
私の業(わざ)は主のもの!
それは私の心に溢れるばかりの豊かさのうちに歓呼する.

それは花開き、
それは明るく照る、ちょうど一つの星の如くに.
アダムの種からの最も気貴い英雄.
君よ、その口は歌に響いている.
君は聖なる炎の真の番人、
主は君を、その栄光の内に戴冠させた.

君の子らに、過ぎ去らぬ御父の王国が起こされるだろう.
君の誇り高き名が過ぎ去ることは、決してない.
そしてあらゆる民、あらゆる霊が
君を主人と呼ぶだろう.

語り部

さて、神の祝福はダビデの家の上に置かれる.
彼は御力の目的を誇らしく見つめる.
世のあらゆる王らは彼と結ばれる.
あらゆる偉大な者らのなかで、最も大いなるは、この人である!

いやしかし、ああ、罪が彼の心に忍び入る.
彼の砦の凸壁から、彼は夕刻の柘榴の庭の内に見たのだ、
その柘榴は、バトシェバの露わな美しさを優美に花開かせた.
彼女は、エリアムの娘、ウリアの妻、その庭で、
自分の女奴隷(はしため)と共に、彼女は水浴びをしていた.

Mandragora 恋なすび, 15世紀
manuscript Tacuinum Sanitatis

18.はしための歌(アルトソロ)

私にその手をお渡しください、私の友よ!
丘から私たちをくだらせてください、
(葡萄の)房が花咲く土地に下がったところへ.
葡萄は甘く、魅力的で、まだ開花していない.
いいえ、見て、マンドラゴラ(恋なすび)の黄金が、
燃えるように輝いている.

語り部

その栄華に我を忘れ、彼はバトシェバを自らの家に迎え、ウリアを死に至らしめた.

イェホヴァ(主)の怒りはしかし、
彼の愛する子の上に臨んだ.
バトシェバが彼にもうけたその子が死に、
ダビデは苦痛を主に呼ばわり、嘆いた.

19.悔改めの詩篇(混声合唱)

主よ、私の神よ、私を憐れみたまえ.
私の呼ばわる声を聞き、 我が叫びを聞きたまえ.
私を清く洗い、 君の恵みと寵愛とに与らせたまえ!
主、私の神よ、私を憐れみたまえ.

語り部

そこで神はナタンを遣わされた.ダビデとその妻のところへ、
彼らに咎を諌めるために.その罪は最高の怒りを呼びさまし
王の家を、悲しみに突き落とすものだった.

20.詩篇(混声合唱)

私は罪と困窮の内に産み出された.
私はすでに死へとむけて生れていた.
君はしかし、弱い魂を信仰の内に強く、
誤りのないものとすることを望まれた.

災いあれ、私に.
私は罪を犯した、おお、神よ!

君が私に義しい道を示されたのに、
私は君の恵みをふいにした.
私を救いたまえ、おお、神よ、私の罪から!

主、私の神よ、私を憐れみたまえ.

語り部

ここに、神の判決がくだる.
ダビデとその姦通の家についての恐ろしい判決が.
そのときアブサロム―父に大変愛された子―が、
その父に対して立ち上がった.

そしてダビデは都から亡命した.法の保護を奪われた者として
遠く、荒野の孤独へ.

21.詩篇(テノールソロ)


山べに向かって私は目を上げる.
そこから、私に助けが来たる.
常しえの御父に向かう、、
私を伴ってくださるお方のもとへ.
今日そうである如く、いつも常しえに!

おお、恐れるな、君の足が突然躓いたことに!
神は君の心を守られる.
光の内に目を覚ましておられる.
群れの牧者、主は、君より先に目覚めておられる.

語り部

だが、そのとき、アブサロムの巨大な隊列が撃退された.
そしてエフライムの森の中、ヨアブがアブサロムを殺した.
武装していなかった者を、彼は楢(オーク)の危険な
(悪意に満ちた)枝に、彼を絡ませた.

22.エフライムの歌(ソプラノソロ、女性合唱)


おお、君よ、エフライムの森よ.
烏の民に呪われた森よ.
あれは、君という実を啄ばんだ.
その枝に下がっていた(房の)実を.
その実は、血によってもはや赤く染まった.
それは私に君の手を差し出した.

この良きものはわたしに促した、
口づけの印を与えるようにと.

語り部

全ての民が戦い取った勝利に酔いしれ、
マハナイムの飾られた城門の前で歌い、
弦楽器を爪弾き祝っている間、
髪も白けた王あ、主の前で泣いた.
息子のため、彼が誰よりも愛した者のために.

23.イスラエルの人々の行進


語り部

さて、ダビデはその手の合図で、軍を立ちどまらせて言った;

「君よ、イスラエルの戦士らよ、今日から君らは私の肉、私の骨だ!
君らは平和を再びイスラエルに打ち立てるのだ.
受け取れ、父の如き王の感謝を!」

そしてイスラエル人はペリシテに対する戦いに最後まで立ち上がった.
そしてさあ、熱い争いからダビデは帰国し、
神への讃美とほめたたえのために、感謝と信頼の歌を歌った。


24.詩篇(混声合唱)


神よ、君は私のとこしえの救い、
私の主、私の英雄、
私の櫓(やぐら)、私の岩、
そして私の救助者、君よ!

君の内に私は見出す、これまで私が求めてきた何事をも.
主は私の盾、私の救い、私の避難所.

困窮の内にあって、私はこのお方を護りとして呼び求める.
私の敵どもから、神は私を救いだしてくださった.

山の小川で、神はまた、私を召そうとお求めになった.
死が、十度も矢を持って私を脅かした.
たとえ私が四方を危険にさらされようとも、
私はその御手の内にある.
神が私を墓の縁まで導かれる.

語り部

さてダビデ、巨大な権力者は、誉れを抱きつつ、
彼の黄金とヒマラヤ杉からなる宮殿の中で、老人となった.

そこへ、新たに彼を密かに襲うもの、それは自負心であった.
彼は自らの民を数えた、自分の強さを知るために.
そして神は再び怒り、預言者を通して彼に三つの厳しい罰を示す.
死の使いの剣が、黒死病(ペスト)から届けられた.

25.詩篇(同度の合唱)


君の御怒りの中で、私の神よ、私は敬います.
私を助けに来てください.
私の叫びを聞き入れてください.
ご自身が慈しみ深いことを明らかにしてください.
私の懇願を聞き入れてください!
私を憐れみなしで、過ぎ去らせないでください!

突然に、周囲の森や野が揺れ動く.
雷が轟き、山脈がはじける(割れる).
頂から轟音を響かせて、下の地まで.

それほどにひどく怒っているのだ、
巨大な御力を持つ口が.

語り部

しかし、永遠者の怒りは鎮まった.
そこでダビデは祝い讃えた.
彼の神に誉れを帰す、栄光の聖所を建てることにより.

そうしてこの偉大な王は、自らの若き日の夢が満たされるのを見る.
それは自らの生涯の充満、悲しみと喜びとの満ち溢れであった.

いや、以前より、この思慮深い放浪者は、
その人生行路を申し分のないものとしていた.
彼はソロモンを王に、イスラエルの指揮者に定めると宣言した.
あらゆる民が、ダビデの王位継承者を熱狂の歓声で迎えている間、
ダビデは、霊にあってすでに変貌し、神殿にむかい、昇っている.
そのうちに、自らの神の家を見るために.

26.ソロモンの戴冠(メロドラム)


語り部

そこでナタンは語る:
「イスラエルの前に、そして
ご自身で(王を)選ばれたイェホヴァ(主)の御前に、
私はソロモンを、王と宣言する、
この油注がれたダビデの子を!」


27.ダビデの死(ソプラノソロ、合唱、独唱声部)


語り部

そして、ダビデは語る、光の流れる神殿に直面して;

「私は仰ぐ、いと高き凸壁の上に、ケルブを.
彼はこう告げている:

『神の義人が君たちのもとに現れるだろう.
私の民を、主の恐れのうちに導くために.』

この生は、いかに豊かで、えいこうに満ちていたことだろう!
私は君に感謝します.
この生を私にお贈りくださった君よ!」

天使(ソプラノソロ)

神は約束される:

このような日がやってくる.
そこでは花々が君たちのために咲きほこり、
恵みの花萼(うてな)/杯(さかずき)が輝く.
おお、なんと愛らしく、魅力的に
それは元気づけてくれることだろう.
この世のあらゆる民を、
神の命の息を!

ハレルヤ(主をほめよ)!



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